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現在の研究
10月13日に奨学論文に提出した21期生の各班の論文です。

  *18期、19期、20期生の論文は
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A班

製品モジュール化度と企業間取引方式選択の関係性
 ~取引方式選択が経営成果に与える影響についての実証研究~


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キーワード 
1.製品アーキテクチャ 2.製品モジュール化度 3.取引方式選択

【要旨内容】
 従来の日系製造企業の競争優位の源泉は,世界トップレベルの軽薄短小型の家電製品や自動車に代表される部品設計・部品構造の微妙なすり合わせによって,最適な部品性能を実現する複雑かつ高品質なインテグラル型アーキテクチャを主とした「モノづくり」であった。これを可能とした背景には,「系列」が挙げられる。だが,今日の市場環境において,系列の特徴である「閉鎖的なネットワーク」の負の側面に注目が集まっている。日系製造企業は,複雑性の源泉である相互依存関係をいまだに強くひきずっている傾向があり,一般にモジュール化の動きに対して遅れがちである。つまり,製品モジュール化に対応できた取引方式を選択できていないと考えられる。
 本稿では,製品アーキテクチャを「製品モジュール化度」の高低によって「モジュラー型」と「インテグラル型」に分類し,企業間取引方式を「アームズレングス取引」と「統合的取引」の2種類に分類した。これらの関係を,既存研究や既存論文によりレビューし,製品モジュール化度に合った取引方式選択は経営成果に正の影響を与える,という仮説を導き出した。
 我々はこれらの仮説に対し,製造企業を対象にアンケートを実施し,実証研究を行った。解析の結果,製品モジュール化度に対応した取引方式選択は経営成果に正の影響を与える,という我々の仮説は実証された。また,今日の日系製造企業は,製品モジュール化度にかかわらず,統合的取引を同程度行っていることが確認された。つまり,今日の日系製造企業は,上述した問題である従来通りの相互依存関係を引きずっているため,市場環境に対応できていないと考えられる。
 以上より,製品アーキテクチャに対応した取引方式を選択することが,今日の日系製造企業を新たな競争優位の源泉へと導くと考えられる。そのために企業は,自社の企業間取引方式の選択を再考すべきである。



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B班

海外帰任者活用システムと職務態度に関する一考察
 ~国際人的資源の活性化に向けた戦略的アプローチ~


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キーワード 
1.海外帰任者活用システム 2.海外帰任者(帰任者) 3.職務満足感 4.組織コミットメント

【要旨内容】
 本論は,海外派遣者に関する問題に端を発し,研究に着手した。従来,日系多国籍企業では海外派遣を現地ポジションの補充,現地と本国の調整役,現地組織開発などを目的とし海外派遣者が必要とされてきた。現在では,グローバル化の流れを受けて,彼らが身につけた国際ビジネスセンスのみならず,経営の現地化,内なる国際化などの促進要因としての役割も期待されており,海外派遣者の有効性が再認識されつつある。しかし,多くの企業では,彼らの帰国後の活用を意図した体系的取り組みの不備により,海外帰任者が経験・能力を本国で活用できずに不満を募らせていることが多いのが現状である。我々は海外派遣者の不満が職務態度に影響を及ぼし,離職・転職を引き起こすリスクが高まり,さらには将来のグローバル人材活用を阻害すると考えた。そこで我々が着目したのが,海外派遣者を活用していくための体系的な施策と海外派遣者の職務態度との関係性である。
 以上より,日系多国籍企業の帰国後10年以内の海外派遣者に焦点を当て,アンケート調査を行い,その結果をもとに実証研究を行った。本論は以下の構成で展開する。
 第1章では,今日の国際人的資源としての海外派遣者の有効性とともに組織の海外派遣施策が抱える問題を明らかにし,問題の所在が帰任に向けた体系的な活用システムにあるとして研究範囲を絞り込んだ。第2章では,文献レビューを通して,職務態度としての職務満足感・組織コミットメントに正の影響を与えうる重要な要素として,公正な評価,適切な配置,再適応という主な3つの要素を用いて仮説設定した。第3章では,分析フレームに基づく4つの研究課題についてアンケート調査,統計解析による検証を行った。本論における我々の仮説は部分的であるが実証された。第4章では,仮説検証に対する考察,インプリケーションと本研究の限界について言及するとともに課題を提示し結びに代えた。



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C班

「製品コンセプト駆動型開発組織の実現と成果に関する実証研究」

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キーワード 
1.製品コンセプト 2.製品コンセプト駆動型開発 3.市場情報獲得行動 4.部門間連結

【要旨内容】
 本論は,企業の製品開発に関する問題に端を発し,研究に着手した。従来,市場ニーズは顕在化しており,企業は市場ニーズに合わせた技術を開発し,製品の機能を充実させることで競争優位を築くことが可能であった。しかし,市場ニーズの潜在部分の拡大に伴い,製品開発に用いる技術の見極めが困難となり,企業の製品開発による成長を妨げる一要因となっている。 つまり,市場ニーズを主導とした市場駆動型開発や,技術を主導とした技術駆動型開発は限界を向かえつつあると言える。こうした現状において,潜在需要の技術的表現を製品概念として統合化し,製品開発に用いる技術目標を明確化する二つの相互作用が必要だと思われる。そこで我々が着目したのが,市場ニーズと技術の緊密化した融合を実現する重要な要因としての「製品コンセプト」である。本論は,この製品コンセプトを主導とした製品コンセプト駆動型開発を実現させる要因と,もたらす成果を実証的に検証することを主目的としている。
 以上より,製品開発を行っている日系企業に焦点を当て,アンケート調査を行い,その結果をもとに実証研究を行った。本論は以下の構成で展開する。
 第1章では,今日の製品開発環境における問題点と,製品コンセプトの有効性を明らかにし,製品コンセプト駆動型開発を実現させる組織形態・行動,およびその成果に研究領域を絞った。第2章では,文献レビューを通し,製品コンセプト駆動型開発に正の影響を与え得る2つの要素として,市場情報獲得行動,部門間連結を設定し,もたらし得る成果として,新製品開発成果,組織的成果を設定した。第3章では,分析フレームに基づく4つの研究課題についてのアンケート調査,統計解析による検証を行った。本論における我々の仮説は概ね実証された。第4章では,仮説検証に対する考察,インプリケーションと本研究の限界について言及するとともに今後の課題を提示し,結びに代えた。


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by morokami_seminar | 2005-10-04 16:52
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